2022.08.31 稲盛さんから学んだこと
8月24日、稲盛和夫氏が老衰のため逝去されました。享年90歳。残念な思いと、ご生前のご指導に深く感謝するとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
私は2012年、盛和塾に入塾し、稲盛さんを師とし経営哲学のみならず、人生や生き方においても多くのことをご指導いただき、多くの学びの機会をいただきました。デザイナーとして35年、レベルフォーデザイン設立から25年、今日まで継続できているのは、稲盛さんとの出会いと学びのおかげであると言っても過言ではありません。その反面、その教えを全て実行できているかと言われると反省点ばかりで、自らの未熟さを痛感もしています。
1983年に発足された盛和塾。私が経営に行き詰まり悩んでいた時、入塾のきっかけになったのは、稲盛さんの書籍「生き方」に書かれてあった一言。
「組織はトップの器以上に大きくならない」
雷に打たれたような衝撃で入塾を決意しました。入塾当時は小さな会社ながら十数年、経営をしていたにも関わらず知らないことばかりで、時には恥もかきながら一歩ずつ前進していきました。「10年早くこの機会に触れていれば」と後悔にも似た思いを巡らせながら考えた、レベルフォーデザインのフィロソフィーが、
全社員の物心両面の成長と幸福を追求し
デザインの力で社会に貢献する。
「まずは、トップの思いに共鳴してくれて集まった社員のみなさんの幸せを考え追求するのが会社の役目なのです。どんな業種、職種であってもこれは変わりません。」と稲盛さんからアドバイスをいただきつくったものです。これがぶれない軸となり、少しずつですが会社も成長してきました。
そんな盛和塾は私の入塾から7年後、塾長である稲盛さんがご高齢で積極的に活動に参加できないという背景で2019年にその幕を閉じました。私が稲盛さんの最後に声を聞いたのは、4800名の経営者が集結した盛和塾世界大会に寄せられたビデオレター。そのメッセージは「学んだフィロソフィーを会社の発展に貢献するだけでなく、個々人の人生も素晴らしいものにする真理であり、経営者と従業員がともに繰り返し学び、自らの血肉と化し、経営の現場で実践してほしい」という内容でした。その言葉からは「教えることは全てみなさんに伝えました。あとは頼みましたよ。」とバトンを渡されたような感覚でした。36年続いたこの勉強会、一代で終わらせるという決断も、なんとも潔いというか、稲盛さんらしいというか、これが、京セラとKDDIという異業種の大企業2社を育て上げ、80歳という年齢で、経営破綻した日本航空を再生へと結実させた、日本を代表する経営者の判断かと感銘をも受けました。そして盛和塾の解散は「終わりではなく、皆さんにとっての始まり」であるとエールをいただき3年、稲盛さんの亡き今、これまでの教えを振り返る今日。空から見守ってくれている稲盛さんに良い報告ができるよう、これからも精進していまいります。
稲盛さん。90年お疲れ様でございました。本当にありがとうございます。
レベルフォーデザイン代表取締役 清水啓介
