戦略を軸に『らしさ』を根幹とするブランディングの手順
公開日2026.03.05 更新日2026.04.07
「ブランディングによって事業を改善したい」「周年を迎えるにあたりブランディングによって未来へ向けたメッセージを発信したい」企業活動におけるさまざまな転換点や節目。そのようなタイミングで「ブランディングを推進しよう」となった場合、まず何から始めますか。
ブランディングを担当する部署があるような大企業であれば、その部署を中心に進めることができるかもしれません。しかし中小企業や地域企業の多くが「ブランディングのことがよくわからない」「ブランディングってどうやるの?」と疑問を抱えて足踏みをしているのではないでしょうか。
ここではレベルフォーデザインが考えるブランディングの基本的な概要とその手順について、ステップごとになるべくわかりやすくお話したいと思います。すべてを理解することは難しくても、興味を持つことでブランディングのスタートラインに立つことができます。まずは簡単にできることから始めてみましょう。
そもそもブランドって何?
ブランディングのことがよくわからない場合、まずどうしたら良いのでしょうか。インターネットで検索したり、ブランディングに関する本を読んだり。今なら恐らく多くの人が、AIに「ブランディングって何をすればいいですか?」と聞くのではないでしょうか。結果としてかなり整理された情報を得ることができるかもしれませんが、その通りに実行すればブランディングが上手くいくかというと…。このように何から手をつけて良いのかわからず、最初の一歩が難しく感じられるかもしれません。
ではまず、そもそもの話として「ブランド」とは何なのか、そのことをきちんと答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。ブランド(英語のbrand)の起源は古代ノルウェー語(古ノルド語)の「brandr」=「焼く」が語源とされており、もともとは家畜に焼印を押して所有者を識別することを意味していました。それが時代の流れの中で商業的な紋章(ロゴマーク)へと変化し、単なる印から品質や信用を示す証となり、現代においては体験や世界観といった無形の価値を表すものへと意味を広げてきました。
経営理念を土台とするブランディング
では「ブランディング」とは何でしょうか。辞書をひいてみると「商品やサービス、企業そのものを他社と区別し、顧客の信頼性や好感、共感を得ることで価値を高めていく取り組み」としています。これは辞書によって表現が微妙に変わってきますし、ブランディングを専門とする会社によってもその定義はさまざまです。
レベルフォーデザインが考えるブランディングは「『らしさ』を価値へと変えてファンになってもらうこと」と定義しています。その企業が創業より持っている哲学や理念、価値観や文化といったものを発見し、磨きをかけて独自の価値「らしさ」とすることで差異化する。そしてその「らしさ」に対し共感や信頼を得ることでファン(好き)になってもらうということです。
ここで特に強調したいのは、その企業独自の「らしさ」という価値を、すべての企業活動の軸に据えることです。一貫した価値観や理念をすべての社員に、ひいてはすべてのステークホルダーに対し戦略的に浸透させることこそが、ブランディングを成功させるために重要なのです。
そしてその戦略の土台になるのが「経営理念」です。一般的に経営理念の上位概念として、その企業の存在意義を示す「企業理念」がありますが、普遍的である一方で抽象的な言葉になりがちであるため、より具体的で実務的な経営理念をレベルフォーデザインが考える戦略の土台としています。
この理念体系については、その企業ごとの方針によって、さまざまな形があっても良いと思います。「企業理念→経営理念→行動指針」という形はもちろん「パーパス→ミッション→ビジョン→バリュー」という社会的な存在意義を中心に据える形も最近ではよく見られます。大切なのは、一貫性のあるメッセージと独自の価値を発信・提供することで、すべてのステークホルダーに対してなくてはならない存在になるということです。
・企業理念…企業の在り方や存在理由・目的を示したもの
・経営理念…事業を進める上での経営の姿勢、目標や方針を示したもの
・パーパス…「なぜ存在するのか」企業が社会に存在する理由
・ミッション…「何をするのか」企業の使命
・ビジョン…「どんな未来を目指すのか」実現したい理想の未来像
・バリュー…「どのように行動するのか」価値観や行動指針
「でも結局ブランディングって、ロゴマークやメッセージを新しくすればいいんでしょ?」ブランディングについてよく聞かれる話ですが、正しい定義を理解していれば、これが間違った認識であることがわかるはずです。もちろんメッセージの刷新は理念体系を新たにするという意味では必要になります。ロゴデザインのリニューアルも、絶対ではありませんが戦略によっては必要になる要素です。ですがここで間違えてはいけないのが、ブランディングとは決して体裁よく見た目を整えることではないということです。見つけて磨いた企業の「想い」や「らしさ(価値)」を伝えて、社内外すべてのステークホルダーにファン(好き)になってもらうことこそが本質なのです。 まずは固定観念を捨てて正しく理解をすること。ここからがブランディングのスタートとなります。
ブランディングフローを貫く「ストラテジー(戦略)設計」
最初に行うのが、クリエイティブディレクターを中心としたストラテジックチームによる戦略設計です。ここではまず、ブランディングが必要だと考えるに至った背景を伺うと同時に、ブランディングの考え方についてより詳しく解説をします。まずはブランディングに関する疑問をクリアにし互いへの理解を深めることで、ブランディング・フローを円滑に進められるようにします。
具体的にブランド戦略に関わるヒアリングでは、企業の存在意義や思想など、どのような考え・哲学のもとに企業活動を行なっているのかということや、市場における状況などを伺っていきます。それらの現状を踏まえた上で、あらためて外部環境(市場・競合等)を調査・分析・整理することで、ブランドの目的(なぜブランドを構築するのか)、ターゲットオーディエンス(誰のためのブランドか)やポジショニング(市場における立ち位置)等を定義することができます。さらにブランドコンセプトやブランドパーソナリティの設定によって独自の価値「らしさ」が明確になり、結果として「差異化」につながるのです。
・ブランドコンセプト…「何のために存在し、どんな価値を提供するか」というブランドの核となる考えを言語化したもの
・ブランドパーソナリティ…ブランドの人格・性格・キャラクター
ここで何より意識すべきは「差異化」を図るということです。外部の情報を軸にしてブランドを構築しようとすると、競合や市場のトレンドに振り回されて「差別化」をすることになり、結果としてそのブランドの「らしさ」が薄れてしまい強いブランドは育ちません。ブランド構築のために大切なのは、企業の内側にある想い、価値観や文化といった独自の価値を磨き上げた「らしさ」によって「差異化」をすることなのです。
では外部環境や市場の調査・分析等はなぜ必要なのか。それはブランドをつくるための「軸」ではなく「文脈」を知るための情報として欠かせないのです。その企業が発信・提供する価値「らしさ」が、社会から受け入れてもらえるものになっているのかどうか。またはその価値に共鳴してくれるターゲットは誰なのか。このように外部の情報は「差異化」を確認・検証するために必要となります。
・差異化…自身の本質から生まれる独自性を起点にするため、自然と他のものと異なる=内発的(自身の本質起点)
・差別化…他のものと比較をして優劣をつけることで、違うことを目的とする=外発的(競合比較起点)
以上のようにストラテジー(戦略)設計は、ブランディングの根幹となる「らしさ」を定義することからも、マインド・アイデンティティ(理念・思想)、ビジュアル・アイデンティティ(デザイン)、ビヘイビア・アイデンティティ(行動・体験)というすべてのブランディング・フローに一貫性を持たせるための「背骨」と言えます。そのため中長期的な視点で長く愛されるブランドを育てるためにも、ただ単に「理念・思想→デザイン→行動・体験」というプロセスを辿るのではなく、すべてのフェーズを貫く背骨としての戦略設計が欠かせないのです。
ブランドの中核を成す「マインド・アイデンティティ」
次に行うのが「マインド・アイデンティティ」のフェーズです。ここでは理念・思想や哲学といった企業の中核を成す姿勢や考え方を定義します。企業の本質とも言える要素で、ブランドを構築するための起点として戦略設計と密接に関わる大変重要なフェーズであり、パーパス・ミッション・ビジョン・バリューや企業理念・経営理念として、企業の思想・哲学または戦略を定めて理念体系としてまとめます。また創業者の想いやブランドのルーツを情緒的な物語として伝える「ブランドストーリー」や、信念や価値観を強い意志として宣言する「ブランドマニフェスト」などのメッセージを発信することで、さらに理解と共感を得られるようなかたちに強化します。
どのような要素で構成するかは、前述のとおり企業ごとの考え方によってさまざまです。理解しておきたいのは、一貫性を持ったメッセージによって、すべてのステークホルダーに対し独自の価値「らしさ」を伝えることです。そのためにも戦略設計で定めたブランドパーソナリティ等を踏まえ、より具体的な理念を定義しコミュニケーションを図ることが大切なのです。
・ブランドストーリー…ブランドが生まれた背景や理由、未来への想いを「物語」として伝える
・ブランドマニフェスト…ブランドの信念・価値観を「宣言」として明文化する(=ブランドステートメント…ブランドの立場・存在理由をまとめた「声明」)
この考えを踏まえた上で押さえておきたいのが、企業の内側・社内に向けたコミュニケーション「インナーブランディング」です。レベルフォーデザインではインナーブランディングを「すべての従業員・社内関係者に企業哲学(想い)を浸透させ、ブランドの価値を理解し、共感・共有する状態をつくること」と定義しています。このフェーズで定めた理念や思想を絵に描いた餅にしないためにも忘れてはならないのが、すべての社員・スタッフがこの理念・思想を体現することです。これにより社内ではもちろん、社外に対してもブランドの価値「らしさ」を間違いのないイメージで伝えることができるのです。
インナーブランディングについては、コラム「企業の本質を社内に広げるためのインナーブランディング」で詳しく解説をしていますので、併せてご覧ください。
視覚的にブランドの世界観を定義する「ビジュアル・アイデンティティ」
「ビジュアル・アイデンティティ」のフェーズでは、主にアートディレクターを中心としたデザインチームによって、マインド・アイデンティティで定義した理念・思想を、その「らしさ」を軸に「視覚的(ビジュアル)に表現」します。ブランドパーソナリティやブランドコンセプトを踏まえて「視覚的な人格や世界観」をつくる領域で、ブランドがどのように見えるかを定義する「視覚のルール」をつくるフェーズとなります。
ビジュアル・アイデンティティの重要な役割はいくつかありますが、特に大切なのが「らしさを根幹とした一貫性のある世界観の設計」です。ブランドの理念・思想を体現したロゴやシンボルマーク。ブランドの性格を伝えるコーポレートカラーやタイポグラフィ。顧客とのタッチポイントとしてその入り口となるコーポレートサイト。ブランド理解を深めるための会社案内等の各種ツールや名刺に至るまで、統一されたトーン&マナーによってその世界観を構築しなければなりません。
またインナーブランディングや採用活動に活用するビジョンブック・クレドカード等のツールや、想いや価値観をストーリーとしてわかりやすく伝えるためのビジョンムービーなど、その企業・ブランドに関わるビジュアル的な表現を含むものすべてを、一貫性のあるルールのもとに構築・運用します。その結果として、いついかなる場所・タイミングにおいてもそのブランドを認識してもらうことができるようになるのです。
同様にここでも、ブランディング・フローにおける「一貫性」が特に意識すべきポイントです。戦略設計やマインド・アイデンティティとのつながりを考慮した上で「視覚のルール」も定義しなければなりません。「カッコいいから」という理由だけでトレンドに乗ってロゴやコーポレートサイトを制作すると、ブランドの軸となる「らしさ」が失われ、結果としてどこかで見たことがあるようなビジュアルになってしまい、その他の企業やブランドに埋もれてしまいます。独自の価値が何も提示できていない「差異化」のないビジュアルでは、ブランディングそのものの失敗に直結してしまうのです。
ビジュアル・アイデンティティは、ロゴやコーポレートカラー、コーポレートサイトといった目に見えるわかりやすい要素をつくるが故に、勝手なイメージが先行して失敗しやすいフェーズとも言えます。戦略設計で定めた「らしさ」があるからこそ、ビジュアル表現は迷うことなく一貫性を保持することができます。戦略という道がしっかりと敷かれているのであれば、その道を外れないように進んでいくことがブランディング成功への近道と言えるのです。
行動によって社内文化を形成する「ビヘイビア・アイデンティティ」
最後の「ビヘイビア・アイデンティティ」は、ここまで定義してきた要素を実際の「行動・体験」に落とし込むフェーズとなります。「らしさ」を理念として言語化したり、ロゴとしてビジュアル化するだけでは、当然ながらブランドとして完成するには至りません。それらの要素を踏まえた上で、すべての社員・スタッフの「行動」にまで一貫性を持ってつなげていくことで、はじめて「そのブランド独自の価値ある顧客体験」を提供することができます。
それでは具体的にどのような要素を定義していくのでしょうか。ブランドパーソナリティを具体的な行動へと落とし込む行動指針の策定をはじめ、理念や価値観を組織内で理解・浸透・共有するためのワークショップの開催や、ビジョンブック・クレドカード等の各種ツールを活用した社内文化づくりなど、それぞれ各部門の現場に即したかたちで設定していきます。このように具体的な内容でビヘイビア・アイデンティティを定義していくことで、顧客に対して商品やサービス体験をブレなく提供することができます。さらに社内においても評価基準が明確になり、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上につながることで、インナーブランディングの効果も期待できます。
ビヘイビア・アイデンティティ(行動設計)はブランディング・フローにおける最後のフェーズですが、インナーブランディングに直接的に関わるフェーズでもあることから、ビジュアル・アイデンティティ(ビジュアル設計)と並行して進めるケースもあります。ビジュアルによる視覚的な表現には、社員・スタッフのブランドに対する理解と共感を促す役割があります。そして行動(ビヘイビア)は、こうした認識と納得があってはじめて成り立つことから、ビジュアルと行動の設計を同時並行に進めることは理にかなっていると言えるのです。
以上のように「①ストラテジー(戦略)設計を軸としながら→②マインド・アイデンティティ→③ビジュアル・アイデンティティ、ビヘイビア・アイデンティティ」という流れが、レベルフォーデザインが考えるブランディング・フローとなります。もちろんこれは、それぞれの企業の状況によって変わるものです。戦略設計の段階で柔軟に判断することでブランディングを無理なく推進することができます。
ブランディングの成功は「運用」と「継続」
ストラテジー(戦略)設計から3つのアイデンティティを定義するところまでを解説してきましたが、ここがブランディングのゴールではありません。ブランディングの核心は「定義すること」ではなく「継続的に運用し続けること」です。したがって3つのアイデンティティを設定しただけでは意味がありません。ブランディングの本質的な価値とは「運用」と「継続」によってブランドを育て続けることではじめて生まれます。運用を続ける中で積み重なる価値がその企業の文化となり、自立したブランドとして「らしさ」という独自の価値を社内外のステークホルダーに対し発信することができます。ここまで組織が機能し続けることができれば、本当の意味でブランディングは成功したと言えるのだと思います。
信頼できるパートナーの存在が成功への近道
「やっぱり結構ハードルが高いな…」ここまでお読みいただいても、そう感じる方がいて当然だと思います。ブランディングについて何となく理解できたような気がしても、実際にそれをかたちにして成功に導くためには、やはり高い専門性と深い知見が必要となります。インターネットや本で情報や知識を得ることはできるかもしれませんが、それぞれの企業が抱える個別の事案への対応は難しい。またAIであれば、ある程度の疑問への回答はしてくれるかもしれませんが、こちらが期待する企業の本質に触れるような答えを得ることは厳しいでしょう。
ブランディングデザイン会社であるレベルフォーデザインでは、まずお客様を知ることからはじめます。そして同じように我々の会社のこともお客様に知っていただきます。この互いに理解し信頼を深めることこそが、ブランディングを専門とする会社に依頼をすることの大きなメリットになるのです。
ブランディングへの取り組みは、長期的な視点のもと、時間をかけてじっくり進める必要があります。その時間の中で蓄積する成果は、企業・ブランドにとって大きな資産となります。またブランディングはときに、企業のかたちそのものを変えることにつながる可能性もあります。
だからこそ互いを理解し信頼できるパートナーと並走し未来を目指すことこそが、ブランディング成功への近道なのだと考えます。